紅葉の見頃を迎え、「自然を楽しむ」というテーマに相応しい一日となった。出発地の叡山電車「二ノ瀬」駅直前に紅葉のトンネルがあり、展望列車「きらら」はゆっくり進む。既に気持は秋色に染まっていた。 夜泣峠の登り口にある富士神社・守谷神社へ移動し、班分けやストレッチを行なう。光を通した葉が鮮やかで、期待を持たせる準備時間だった。参加者は45 名。スタッフ8名を加えた大人数のため、パーティを三つに分けて時間をずらしながら行動する。衣服を調整し、ゆっくり登りはじめた。 短く折り返しながら峠に達すると、冷たい風が吹き抜けていた。すぐにアウターを着て体力の消耗を防ぐ。登山ではこまめな調節が大事で、体調不良や安全を常に意識する必要があることを学んだ。ここで、峠と鞍部(コル)の違い、峠道の表と裏、「ユリ」道の説明などを班ごとに行なった。雲ヶ畑から小野(大原)にかけては惟喬親王にまつわる伝承が多く、「夜泣き」も親王にかかわっている。 植林地を向山の山頂に達し、京都タワーを真南に望む。山幸橋へ下る尾根では黄色の葉が目立った。三枚のタカノツメと五枚のコシアブラなど、目にする樹木の解説もなされた。クリーンセンター上部の展望地では、班ごとに大きな歓声が上がる。紅葉を前に比叡山や大文字山が姿を覗かせ、これまで歩いてきたコースを振り返る。写真を撮る方も多かった。 鴨川(雲ヶ畑川)の流れを渡り、車坂の畑地で昼食。青空をバックに、赤・橙・黄・緑のグラデーションが美しい。そのあと、やや荒れた盗人谷では谷の分岐や二又(二股)など、地形の説明を聞きながら遡る。小峠で北山杉の美林を目にし、氷室の集落へ入った。 傾き始めた太陽を気にしながら城山の東側にある峠を越え、京見坂にある茶屋の前を通って長坂の旧道を下る。丹波と京を結んだ古道には歴史を感じる佇まいがあり、夕陽に照らされた比叡山や鷹峯を眺めながら千束へ下った。集落手前の広場で解散する。 距離は長かったものの、自然と風景を愛でながら静かな一日を過ごすことができた。光悦寺など観光地はまだ多くの人で賑わっており、この時期としては参加者だけの贅沢なひとときを満喫するコースであった。(Y.T) |